「いまだ下山せず!」宝島文庫 泉康子(著)

猛吹雪の冬山で行方不明になった3人の男たち。懸命にその足跡を追う仲間と家族。やがて浮かび上がる最大の謎…彼らは最も危険な“冬の沢”を下ったのか。それは、なぜ!? 事実を積み重ね、推理を検証して「真実」に迫る、感動のヒューマン・ドキュメント!!


10年以上前の学生時代に読み、衝撃を受けた本。
昨年2009年に「新装版」として再版されたと岳人で読んで、もう一度読みたいと思っていた所、古本屋で見つけて、一気に再読しました。

やはり、同じく衝撃を受けました。
それも学生時代よりも大きく・・・。

遭難に至る遭難記や、一線を危うく逃れた生還記とは全く趣の違うこの書。
「遭難後」に残された者達の心情、苦労、衝突、涙、そして時に仲間同士での笑い(!)などまで余すことなく書かれており、良質な遭難捜索ドキュメンタリーとなっています。
しかし良質な遭難捜索ドキュメンタリーであるということは、「自分達は果たしてこれだけの組織力とエネルギーをかけて事にあたれるのか?」という反問となり自分に返ってきます。
その意味では大変に辛い書でもありました。

山岳会という看板を掲げる以上、「遭難」は常に頭にある課題です。
無論それは「遭難防止」という意味において使われますが、自然という大きな存在の前には、自分達はあまりにチッポケです。
どんなに鍛えても頭は岩より固くならないですし、雪が溶け出す0℃は凍死するには十分過ぎる寒さです、鹿やカモシカのように草を食べて生きながらえる事もできません。



話が逸れましたが、本書は山岳会に籍を置く者はもとより、山に登る人全てに勧めたい良書です。