【山行報告】明星山・フリースピリッツ(下山遅れ)


会員が山行に出て下山が出来ずビバーク。翌朝自力下山という事態(「事故」とは言いたくない)がありました。
HPに掲載するか悩みましたが、この事を『他山の石』として教訓になればと思い、あえて公開する事とします。
なお詳しくは下の報告を読んでもらえれば分かりますが、安全に下山が出来ないと分かった時点で「ビバーク」を選択し、無事に1晩を明かし(天候が安定していた、という幸運もありますが)、自力で下山できた事は、良い判断であったと会として考えています。



日時9月24日(日)
山域:明星山P6南壁フリースピリッツ(FS)
メンバー:T野(NT,報告),N盛(HN)

計画 2017.9.24 6時開始18時終了予定 報告期限同19時 留守本部 T橋
実際 2017.9.24 6時開始 18時ビバーク 9.25 5:30AMスタート8時送水管

要約
24日にFSを登り主にJADEのルート沿いのアンカーを使って7回の懸垂下降をする予定だったが、1回目の懸垂下降でロープを回収できなくなり、登り返して、1ビバークののち踏み跡を下山した。24日19時の連絡期限に連絡できず、めっこ山岳会の方3名を迎えにこさせてしまった。

行動記録
9.23
20時 金沢発
22時 明星山展望台 テント泊
9.24  
7:15 FS スタート
1p 草付き岩NT
2p スラブからクラックNT
3p 右下りトラバースNT
4p NT
5p 右トラバースNT
6p カンテからフェースNT
7p スラブ直上HN
8p 凹角から中央バンド階段状の岩場を登るがロープが足りなくなりそうだったのでナチュプロをセットしHNを中央バンドへ上げ、立木でビレーしてもらい次の終了点(ぴかぴかのボルト2個)まで行ってからピッチを切る NT。10:30くらい
9p さらに右上して「黒い垂壁」下 HN
10p 凹角からパノラマバンド 残置シュリンゲのあるボルト2個の終了点で短かったが切った NT
この辺からNT混乱、感覚的にはトラバースをもっとしたあとで、アンカーがあり、フェースとカンテを直上するはずだが、、。
間違ってJADEを登るがFSがこんなに難しいはずがない、ここではないと困惑する。
HNのここにもリングボルトがあるという言葉で正気に戻る。もっとトラバースするのだ。
岩場の整備があったらしく、残置ハーケンや残置シュリンゲが取り払われて岩場がすっきりしており、自分の記憶とずれがあり、混乱した。
だいぶタイムロスした。
11p パノラマバンドを最後までNT
12p ハーケン連打のカンテを登るNT
13p HN ここから懸垂下降しようと思っていたので、懸垂の支点に使えそうな立木まで行くように指示し、ボルトが2個ある新しい終了点がその辺にあるはずなので、探すようにいう。ボルトがなければ木で降りる。JADEより下のテラス状に新しいボルトが2個あった。
HNにそこまで来てもらう。このとき13時くらい。NTがもたつかなければ12時には終了できていた。ここから懸垂を7回2.5-3時間として16時には取り付まで降りるつもりでいた。
アンカーは平岩に打たれておりそこから垂直の壁まではほぼ直角になる。
このときはロープが流れなくなるとは思いつかず、リング部に直接ロープを通し、黄色ロープ引きを確認し、NTが最初に降りる。
パノラマの下に見えていた真新しいボルト2個の終了点に予想通り降り立つ。
ここまで45 mの空中懸垂。

重大ミス① ロープの動作確認をしないままHNを降ろしてしまった。
HNと二人でロープを引くが来ない。
しばらく努力してもまったく引かれないので、登る返すことにする。
ロープはほとんど空中にあるが、岩場との接触部分もあるので、JADEのラインを使いながら、プルージック3本で登る、消耗した。
JADEは奥まったハングから平岩に上る、プルージックをあげながらフリーで登るのは無理だ、ここまで来るのにかなり力を使っていてフリーで行く自信がなく、ロープにゆだねて空中に飛び出した。
振れを小さくするため、プルージックを上にあげていたが、それでもロープの伸びで覚悟していたより振られ、頭と右肩を壁に打ち付けた。
HNから大丈夫かと声をかけられる。
大丈夫と返事して、フリーで登りアンカーにたどり着いた。
アンカーは下の図の左のようになっていた。ロープが来なくて当たり前だ。

リングにシュリンゲをダブルの状態にそれぞれかけ、ロープの広角が保たれるようにした。ここでカラビナを二つかけていればよかったのにそれをしなかった。
一番上のアンカーが奥まったテーブル状であることは予想していたので、長めの捨て縄と工事用アンカーを用意していたのに、それらはザックの中だった。
自分がもっているカラビナはHNのクイックドローのものだけで、それを残置に使うのは新人のHNに申し訳ない気がした。
さらに致命的ミスだがこのときも私は、HNに声をかけて動作確認することが思いつけなかった。そのまま降りてきてしまった。
重大ミス② カラビナをかけなかった
重大ミス③ セットしなおした後、HNに動作確認させなかった

懸垂で降りて再度ロープ回収を試みるが血の気がひいたことには、またしてもロープが来なかった。
しばらく努力するも、まったく動かないので、2度目の登り返しをJADEから試みるが、途中で最後のハングを超える体力が私にはないのでは、また強く打ちつけられたら、こんども無事とは限らない、リスクが大きすぎると思い直し、FSのルートをとって登ることにした。そのためには、HNに私のすぐ後ろについてきてもらわないとならないので、HNに小刻みに登ることを伝える。最悪ロープが足りなくなっても、トラバース部分さえ終わらせていれば、カンテ部分は、ハーケンがべた打ちしてあるので、クイックドロー3つで登れる。
アンカーには必ずたどり着けると思った。
幸いロープはつないだ状態のままでアンカーにたどり着いた。

17時 ロープの回収を試みるが、緑は引けず回収を断念、黄色は回収。
黄色1本なので懸垂下降は不能、踏み跡を下降することに決める。
17時半 薄暗くなってきた。ヘッドランプを忘れたとHNが云っていたのが私がなくてもいい、と言っていたので、ヘッドランプが二人に一つしかなかった。いくら易しくてもこれ以上動かないほうがいい。ビバークすることを決める。
18時 残置シュリンゲとビナのぶら下がった立ち木で確保をとりビバークに入る。水は2Lを二人で運んできたが、15時には飲み干していた。
幸いのどの渇きはそれほどひどくない。HNも同じことを云っていた。
下りの道は迷いやすいことで評判なので、暗い中を歩き回るより夜明けを待って降りよう。
雨具を上下着て、座りやすいように土を掘り、体勢を変えながら体を休めた。
水がないから食べ物は欲しくなかった。
雨は降らず星のきれいな夜でそれほど寒くはなかった。
12時を過ぎると寒くなってきた。

25日
5時 白々としてきた。5時半から動き出すつもりで準備を始める。
5時半 立ち木から少し懸垂して下のブッシュをトラバースして本来のFSを終了させる。
そこから道路と送水管を眺め、どのように下るのか予想した。松の木から山肌をトラバースしていくと、踏み跡のようなものがあり、ピンクのテープとフィックスロープがあったのでその後をたどった。
すぐにフィックスロープはなくなったが、ピンクテープはこまめに続いていて、見失わないようにどのあとを辿った。
7時半 やっと流れがでた。ペットボトルに水をためて、おいしい水をやっと飲むことができた、これで大丈夫だ、と思った。
8時 送水管を渡る。道路に人影が見えた。手を振っているようだ。
T橋さんとS田さんだった、堰堤のよこの踏み跡を登りやっと道にでた。
T橋さんとS田さんとA瀬さんが迎えに来てくれていた。
うれしかったし、自分のダメさを痛感した。

ビバークに至った原因はNTの行ったいくつかのミスにある
1.最初の懸垂で降りた時に動作確認をしなかった。そのことをHNに伝えていなかった。
2.登り返しをしたのに、焦っていて、アンカーを再セットする充分な道具を用意していなかった。
 カラビナを持っていたのに、人のカラビナだからと残置を遠慮してしまった。
3.登り返して設置しなおしてから、当然すべき動作確認を下にいたHNにさせることが思いつけなかった。

自分のいい加減さから、N盛君とご家族、めっこ山岳会の方たちにご心配をかけ、T橋さん、S田さん、A瀬さんたちに、新潟までも、ご足労いただき、感謝するとともに、とても申し訳なく思っています。
今回しでかしたことは変えられないので、得た経験を今後の山行に活かしていこうと思います。
N盛君はフォローもリードも早く、ビバークにも冷静に対処し、本当に助けられました。ありがとうございました。