【山行報告】イタリア/ドロミテ

日程:2019年8月9日〜18日
山域:イタリア/ドロミテ
メンバー:M崎、他

初の海外遠征でイタリアのドロミテへ行ってきました。
ドロミテはイタリア北東部の東アルプスに広がる山岳一帯を指し、岩は石灰岩でロッククライミング発祥の地と言われる場所です。
今回は経験豊富な山の先輩方と行動を共にでき、充実した山行となりました。
10日間の遠征のため、文書は長いです。

8月9日:出国(日本からドロミテへ)
8月10日:Cinque Torri/Torre Grande/Direttissima Scoiattoli
8月11日:Tre Cime/Cima Grande/Comici-Dimai
8月12日:レスト日(コルティナ観光)
8月13日:Cinque Torri/フリー
8月14日:3rd Sella Tower/Vinatzer
8月15日:Marmolada South Face(敗退)
8月16日:Piz Ciavazes/Schubert,Route of Friendship
8月17日:ヴェネチア観光のちイタリア出国
8月18日:帰国

8月9日(金)
初日は羽田からヴェネチアまで飛んだ後、ヴェネチアからレンタカーで山行のベースとするサンタ・フォスカの宿まで移動する。
宿までの移動中に見えるドロミテの巨大な岩山に圧倒される。
街には飲食店やスーパーがあり、滞在中は安くて美味しいものを口にできた。
ただ、宿の駐車場のスペースが車のサイズギリギリのため、毎日車の出し入れに苦労した。

移動中に見えた岩山


8月10日(土)晴
◎Cinque Torri/Torre Grande/Direttissima Scoiattoli(Ⅷ-,5P,140m)
初日は短いマルチで現地の岩場に慣れると共に翌日の山行に向けて辛めのルートを登る。
チンクトリは「5つの塔」という意味でトレグランデはその5つの中で一番大きな岩峰である。
Ⅷ-というピッチグレードは自分にとってオーバーグレードであるが、人工を使ってでも登り切る練習としてよい準備運動となった。
下山後は現地のスーパーで買出しをして、夜は盛大に宴会をする。

チンクトリの岩峰

登攀ライン


8月11日(日)晴
◎Tre Cime/Cima Grande/Comici-Dimai(Ⅶ+,17P,520m)
チマグランデはトレチメ(別名:ドライチンネ )の山塊で一番大きく、標高は剱岳と同じ2999m。
その中でも北壁にあるコミチルートはドロミテきってのクラシックルートであり、今回の山行の大目標である。
当日は登攀時間が長くなることを見込んで夜明け前からアプローチを開始し、朝方早くから取り付く。
実際に見る岩壁はとても大きく想像を超えていた。
今回はとにかくスピードを重視して、リード固定で登攀力のある先輩にオールリードしてもらい、自分は2人分の荷を背負って難しいピッチはユマーリングで登ることとした。
先行が2パーティいるため何ピッチか渋滞待ちとなったが、途中で1パーティが懸垂で降りていったため、その後は渋滞待ちもなく自分達のペースで登ることができた。
ルートの前半はⅦ級のピッチが何ピッチも続き、後半はピッチグレードは下がるもののルーファイが複雑でビチョビチョに濡れたセクションも出てくる。
時間は掛かったが何とか明るいうちに完登するも下降路が分かりにくい上に長く、下山は真夜中となってしまった。
とは言え、コミチルートを完登できたことは大きな収穫となった。

チマグランデ(右の側壁が北壁)


登攀ライン(終了点までは見渡せない)


北壁の別ルートにも複数のパーティが取り付いていた


ビチョビチョに濡れたピッチ




image6.jpeg
40m弱の高度感のあるトラバース

8月12日(月)雨
前日の山行の疲れがあるためレスト日とし、コルティナを観光した。
コルティナはドロミテの中心地にある一番大きな街で四方を山で囲われているため、景観は最高である。
2026年には冬季五輪の開催地となるらしい。
観光中に寄ったカフェで前日に同じルートを登っていたドイツ人パーティとばったり遭遇し、国籍は違くとも考えることは一緒なんだと感じた。
街の登山ショップに寄ると様々なギアが安く売っており、特にミレーのダブルロープ(7.9mm,60m,ドライ加工)が2本セットでバカ安かった(約21000円)のでホクホク顔で衝動買いしてしまった。


コルティナのメインストリート

立ち寄った登山ショップ


8月13日(火)曇りのち雨
この日は午後から雨の予報なのでチンクトリでフリーとした。
車での移動途中でカウベルを付けた牛を見学する。
ドロミテには大抵の場所に牛がいて、登攀中もカウベルの音が引っ切り無しに聞こえていた。
岩場に到着後、素晴らしい景観の中で良質な石灰岩の岩場を雨が降るまでゆっくり楽しんだ。


牛がたくさん


牛さんの後ろには大岩壁


8月14日(水)晴
◎3rd Sella Tower/Vinatzer(Ⅴ+,11P,350m)
セッラタワーは4つの岩峰から成り立ち、今回登った第3峰はその中で1番大きな岩である。
登攀は快適であったがルートの上部まで陽が当たらず寒い思いをして登った。
山頂には登頂ノートが置いてあり記帳する。
日本人としては今年初の登頂者であった。
また、山頂からはラングコッフェルの巨大な岩山が間近に見え次回の目標として心に刻む。


セッラタワー


登攀ライン


ラングコッフェル(右の岩山)

8月15日(木)晴
◎Marmolada South Face(敗退)
マルモラーダはドロミテの最高峰(3343m)で、その南壁は数キロに及んで800m前後の壁が続いており山頂まで突き抜けている。
今回はその中で最もお手軽な「Tomason(V,24P,650m)」を登ろうと意気込んでいたが、アプローチに4時間要するところ2時間とトポを見誤った上に1時間ほど道迷いして体力と時間を消費したため、取付で登攀を断念した。
同行いただいたパートナーには非常に申し訳なく、また、自分が情けなくなった。
とは言えマルモラーダには登りたいので一般ルートで登頂を目指したが、途中で腹痛に襲われて敗退する。非常にお粗末である。
なお、同行者は無事に登頂。



登る予定だった壁


8月16日(金)晴
◎Piz Ciavazes/Schubert,Route of Friendship(Ⅵ-,7P,250m)
登攀最終日は疲れも溜まっているため程々のマルチで山行を締めることとした。
朝方ゆっくりと岩場に向かい駐車場から15分で取付に到着。
ドロミテの多くの岩場もそうなのだが、アプローチの近さもドロミテの魅力である。
滞りなく登攀は終了したものの、ドロミテの魅力にハマりきっているため、明日には出国することを思うと哀しくなった。


登攀ライン
すぐ下に駐車場が見える


8月17日(土)晴
この日は出国日のため宿を片付けて空港まで移動するついでに、ヴェネチアで観光をした。
水の都と呼ばれる都市は見事であったが、観光地価格で物価が非常に高く(ドロミテ市街の3倍程)、恐ろしい街だと痛感した。

8月18日(日)
帰国。蒸し暑い。